「まー単位落としたし、経理は無いな」
大学1年次は簿記の必修単位を落とし、
本気で簿記が嫌いでした。
こんにちは、kyouです。
そんな私のファーストキャリアが
財務部の外国為替担当です。
人生分からないものですね。
今回は前回に続き、
真面目な会計の新書の紹介です。
つらい勉強したくないけど、
「数字に強くなりたい」。
そんな方にお勧めなのは、
「財務3表一体理解法」と、
「財務3表図解分析法」の2冊です。
どちらも同じ著者が書いていて、
漫画版もあるので是非そちらもどうぞ。
「銀行はブロックチェーンの普及で潰れる」
「会計士や税理士は無くなる」
技術の進歩に従って、そんな論調も出始めました。
ですが実態は今まで専売特許に見えたものが、
一般教養になるだけの話でしょう。
財務諸表の概要を掴んで「おおよそ間違いのない」判断を下すのは、
エッセンスさえ掴んでしまえば誰でもできます。
銀行員や会計士の専売特許でもありません。
むしろこれからは重箱の隅をつつくような知識よりも、
「判断するための材料を読み解ける」ことの方が重要になります。
これから複業をする人も増えるでしょうし、
自分のビジネスを回すためにも「財務分析」をそれぞれが考える必要が出てきます。
それにたとえ銀行や会計士が無くなっても、
「会計のルールに精通し、投資の判断が下せる人」のニーズは無くならないでしょう。
このスキルは就活生でも本書を読んで、
実践すれば十分理解できます。
キーワードは3つです。
「つながり」「純資産会計」「ROE」
前回紹介した簿記の参考書で、
財務諸表が出来るまでのプロセスを学び、
本書と合わせて学習するとより大きな効果が見込めます。
(前回の記事はコチラです。
https://kyou-dokusyo.com/bookkeeping-guidebook)
まずは前回と同じように「全体像」の把握から。
財務諸表の「つながり」を理解しよう
「いや、こんな大量になるんかい……ええと、この比率がどうなるんだ?」
いざ、会計の勉強をスタートして財務諸表を分析しようと思っても、
印刷して現物を見た瞬間に萎える。
それでも何とか分析しようとしても、数字の海に溺れる。
私も溺れました。
もし初見で完璧に分析できる人がいたら、
会ってみたいです。
少なくとも90%の人間はパンクすると思います。
どこかの金融系の会社がインターンで、
いきなり「この会社の(東証一部上場企業)の財務諸表を分析せよ」
何て課題を出したらしいです。
それ聞いて鬼かと思いました。
まずは3つの表の「つながり」を理解しましょう。
財務諸表の分析で注目するのは3つの表です。
「BS(貸借対照表)」、
「PL(損益計算書)」、
「CS(キャッシュフロー計算書)」の3つです。
各々定義はありますが、気にするのは一点です。
「利益はどうなった?」
「利益の行方」を追いかける
詳しい表の定義は本書で確認いただくとして、
「利益の行方」をまず念頭に置きましょう。
「会計」はそもそも経営者にとって、
「自分の手元にいくら利益(または現金)が残るねん?」という疑問を
解決するために考案された仕組みです。
「つながり」を理解するには、
1PLの一番下の「当期純利益」を見る
2BSの「繰越利益剰余金」が1とつながる。
3「繰越利益剰余金」の増減した分がBS左側の「現金」とつながる。
4「現金」の増減はCSの増減幅と同じ
という順番で考えることが大切です。
一つ一つの取引が、
どうPLの「当期純利益」に、
影響を与えるかを考えるとわかりやすいです。
そしてこの考え方は応用できる範囲が広い。
仕事ではまず間違いなく必要とされますし、
簿記検定では上位の試験になればなるほど、
「最終的な利益の増減はどうなるのか」という視点が入ってきます。
その簿記検定を見ながら試験問題を作る大学の先生もまた同じです。
是非ともこの新書で「利益の行方」を追えるようにしましょう。
これが次に解説する「純資産会計」にもつながってきます。
「純資産会計」を理解しよう
「企業が従業員に儲けを還元しないのはけしからん!! 内部留保に課税だ!!」
ネットで時々このような発言を耳にしますが、 2つの意味でまずい。
1つ目はPLの構造を無視していること、
2つ目は内部留保とキャッシュがごちゃ混ぜになっていることです。
その意味がきちんと解説されているのがこの本の強みです。
そしてこの分野はきちんと「会計的にモノを考えられるか」の 分かれ目になります。
1つ目をまず解説します。
簿記が何故生まれたかをさかのぼると、
事業にお金を出した人(株主)にとっては、
「俺の取り分いくらやねん?」という疑問に行きつきます。
純資産会計はまさにこの分野なのです。
PLは全ての費用や税金を引いて、
当期純利益を出します。
株主の取り分はここから捻出されます。
ここにさらに課税なんてことすると、
2重に課税することになります。
そんなことしたら、
だれもベンチャー企業にお金を出さなくなるでしょう。
2重に税金取られてようやく自分の取り分が来ることになるわけですから。
2つ目は内部留保とキャッシュの違いです。
ここは「利益の行方」を追うことにも関連します。
イメージとして「内部留保」は、
会社の金庫や通帳にたまったお金を想像しますが、
違います。
その理由は「つけ払い」を考えると解りやすいです。
普通に生活していると現金はすぐに払うシーンが多いです。
しかし企業同士の取引ではむしろ売掛金や買掛金という形が普通です。
ものを売り買いしたタイミングと、
実際にお金が通帳に反映されるタイミングにはズレが生じるわけです。
同じことが機械や建物を買った時に生じます。
代金は一括で払っても、いきなり機械の価値がゼロになったなんてことは
あまりないでしょう。(減損会計は今は置いときます。念のため)
少しづつ、機械の経年劣化を反映します。
こうして、多様な取引を通じて、
帳簿上の計算と実際の預金通帳の中身にはズレが発生していきます。
これが「内部留保」と「キャッシュ」の違いになるわけです。
これを管理しないがために起こるのが、
「勘定合って銭足らず」や「黒字倒産」というわけです。
個人のレベルでは給料日前にお金が足りなくなるアレですね。
このメカニズムは言ってしまえば当たり前ですが、
本書では非常にわかりやすく解説されています。
ここをスローモーションで解説して、
誰にでも分かる形にまとまっているのは現状この本が一番ではないでしょうか。
ROEを理解しよう
「実はこの式だけ理解すれば、財務諸表は何でも分析できるんや!!」
私が財務の道を志すきっかけとなった、
大学の授業での言葉です。
「財務3表図解分析法」のp27より引用します。
ROE=財務レバレッジ × 総資産回転率 × 売上高当期純利益率
詳しくは本書を見て欲しいのですが一つの式だけで、
会計の骨子をすべてカバーしています。
この式の意味は
お金をどうやって集め、
どのように投資を行い、
どのくらい利益を生んだのかということです。
全体のプロセスを比べることで、
分かりやすく分析できます。
時系列で分析するにしろ、同業他社との比較をするにしろ、
この視点が基本になります。
ここに実際の現金の流れをCSで裏付けを取れば、
会計に触れて時間の浅い方でも、
かなりの精度で分析することが出来ます。
この式に数字を当てはめて考えることをまずは徹底しましょう。
そうすれば、数字の海を泳いでいくことが出来るようになります。
財務分析の私のしくじり
「やっぱり、本当に失敗した」
私が前職を辞める時に得た教訓の一つは、
「会社選びの時は10年分の財務諸表に目を通すべき」ということです。
就職活動のときには、財務諸表を分析してはいましたが
それは「5年分」まででした。
景気循環はおよそ10年と言われるので、
好況時、不況時両方の時点で会社がどれほど儲かるかを見なければなりません。
しかし、学生時代の私は手を抜いてしまった。
株主向けの情報で、調べられるものを調べなかったわけです。
結果として、
「不況時に赤字になる会社」という側面を見逃してしまいました。
儲からない会社は居心地が悪かったです。
資金も人材も余裕がないわけですから。
この記事の読者にはそうなってほしくはありません。
わずかな手間で失敗を防げるなら、
それに越したことはありません。
社風、仕事内容、福利厚生。
会社選びにはいろいろな条件がありますが、
是非フィルターの一つとして「儲かっている会社」をより強く意識出来れば、
大きな失敗を防ぐことができるのではないのでしょうか。
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